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掲載日:2017.12.04

トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム~地域人材コース(イタリア)活動報告書(11月)

酪農学園大学大学院 修士2年 髙橋 宗一郎

 11月は私の留学期間で最も内容の濃い期間になりました。2件のワイナリー訪問、そしてワイナリーが集まるフェスタ2カ所への参加、大学での活動の修了といった、多くのことがありました。この報告書ではそれぞれ絞ってご報告します。
 11月初旬のワイナリー訪問では、私の生活していたマルケ州のワイナリー2軒を訪問しました。いずれも、私の語学の先生であり、この地域のスペシャリストであるRaffaela(ラッファエラ)に同行してもらうことで計画を実行することが出来ました。1軒目はクプラモンターナという小さな地域のLa Marca di San Michele(ラ・マルカ・ディ・サンミケーレ)というワイナリーを訪問しました。ここは栽培から醸造までを一貫して自然な形で行っており、農薬の使用、商業酵母の使用はしていないワイナリーです。年間3万本という生産本数は北海道の小規模ワイナリーと同じ規模と言えます。興味深かった話は、隣接する一般的な栽培方法のワイナリーとの収量の比較でした。マルケ州は今夏、40℃を超える非常に厳しい暑さが長く続き、ブドウの収量に大きな打撃を与えました。どのワイナリーでも影響は大きくLa Marcaでも収量が15%減少したそうですが、隣のワイナリーでは70%も減少したそうです。その原因について醸造担当のアレッサンドロ氏は「農薬や大量の肥料に頼るとブドウの木が根を深く張らない。根を深く張ることは自力で水分を吸収する上でも、土壌のミネラル分を吸収する上でも非常に重要で、同時に生命力も強くなる。雨の降らない猛暑が続いても生き残れたのは、ブドウが本来の生命力を持っていたからだと考えている」と話していました。さらに彼らは自分たちの畑の中でも、それぞれの土壌に違いがあることを知っており、早くに樹の葉が落ちた畑と、まだ葉を残している畑とで、何が足りていないか、どんな肥料(豆などの自然なもの)を与えれば良いかということを説明してくれました。この後はもう一軒のワイナリーを訪問したのですが、どちらのワイナリーでも主力のワインはVerdicchio(ベルディッキオ)という白ブドウを使ったワインでした。それぞれのワイナリー、それぞれの年で味の異なる個性的な味を感じました。土地の違いが明確にワインの味に表れていることを感じた貴重な体験でした。


続いてワインのフェスタについてご報告します。1カ所目はエミリアロマーニャ州のピアチェンツァで行われた非常に大きなワインフェスについてです。FIVIという名前のこのフェスタにはイタリア全土から有機農法、自然農法で作っているワイナリーが500以上参加し、2日間かけて盛大に行われました。翌日にもう一つのフェスタに参加する都合上、私は一日しか参加することが出来ませんでしたが、何軒ものワイナリーに取材をし「どうして有機的な、自然に近い栽培方法をしているのか」「北海道のような寒い所でブドウを栽培するにはどうしたら良いか」等、多くの質問に答えて頂くことが出来ました。特に興味深かったのは有機栽培、自然栽培をする理由です。多くのワイナリーが「土地の味を生かす、地域を尊重することに繋がる、外から何かを取り入れるワインは“私たちのワイン”とは呼べない」という話を聞かせてくれました。こういった考えは北海道で同じようにワインを作る方々と共通しているようで、非常に興味深い内容でした。
2カ所目のフェスタはAISマルケというイタリアのソムリエ団体のマルケ州支部が主催したもので、マルケ州の秀逸な50種類のワインが集まるという盛大なものでした。アスコリピチェーノというマルケの観光名所で行われたフェスは、ソムリエの他、生産者やワイン好きの人たちで賑わっていました。私はイタリア在住の日本人ソムリエール、そしてそのパートナー(ソムリエ)と一緒に参加しました。お二人ともソムリエということで、ワインの特徴や表現について教えて頂き、生産者にご紹介して頂くこともできました。一口にマルケのワインと言ってもその種類や味、香りは多種多様で、赤、白、その他細かなバリエーションが充実しているのは海と山に囲まれたマルケ州の特徴をよく表しているように感じました。


大学での研究活動も大詰めを迎えました。先月に引き続き、大学院生の学生実験の準備や授業に共に参加しました。当初は質問に答えることが出来ませんでしたが、最後には相手の意図を理解して、自分に答えられるものは答え、無理なものは他の人に聞くよう促すことが出来るようになりました。また、11月下旬からは研究室で新しい実験が始まり、その導入部分や今後の展開について説明を受け、初期のサンプルを見ながら議論するという場面もありました。こうした非常に恵まれた環境にありながらも、12月に移り変わるのと同時にこの研究室を去らなければならず、別れを惜しみながらマルケ工科大学を後にしました。研究室の研究員、そして受け入れてくださった教授、また同じ分野のもう一人の教授と話をし「今回の留学で、さらにイタリアワインについて知りたいと感じた。今後もワインの研究を続けていくので、ぜひまたここに来たい」という話をし、皆さんが二つ返事で「待っているよ」と言ってくださったことが、この留学の大きな収穫の一つだったように思います。



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