酪農学園大学社会連携センター アーカイブサイト > 全件 > 国際交流 > 体験談 > 研修を終えて(留学) > 2018年度イタリア研修報告 トレンティーノ・アルトアディジェ編 その2

Topics

掲載日:2019.02.19

2018年度イタリア研修報告 トレンティーノ・アルトアディジェ編 その2

大学院 酪農学研究科 博士課程1年 髙橋 宗一郎

 前回に引き続き、トレンティーノ・アルトアディジェを訪問した際の報告をしたいと思う。
 世界遺産に詳しい人なら、ドロミーティ山塊という岩肌が特徴的な山々を聞いたことがあるかもしれない。トレンティーノ・アルトアディジェ州に入ると、こうした山々が大小問わずとにかく多い。車で移動していても、山間を移動しているのがよく分かる。ローマやミラノは30℃を超えるような気温が続いている時期だったが、私が滞在していた場所は標高が高く、朝晩は10℃を下回っていた。フランチェスコやその家族、友人たちと、イタリアの秋の風物詩であるポルチーニ茸を探しに行った朝も、かなり冷え込んでいた上に、結局私はひとつもそれを見つけることが出来なかった。朝からのんびりとシュトゥルーデル(オーストリアのパイ)を食べ、カードゲームをしたり、子どものように山奥に入ってキノコ狩りをしたり……イタリア人の休日、バカンスの過ごし方を垣間見たような気がする。
 トレンティーノ・アルトアディジェは、その名の通り、南側のトレンティーノ地域と、北側のアルトアディジェ地域に分かれている。アルトアディジェ地域は、オーストリアと接しており、歴史的にもオーストリアだった時代があるため、道路標識などもドイツ語と併記になっている。私がアルトアディジェのワイナリーで試飲をして感じたのは、北海道のワインに似た味わいであるということだった。冷涼な気候という共通点だけでなく、栽培されている品種も、ドイツ系のケルナー、ゲヴュルツトラミネール、ミュラートゥルガウ等、北海道に根付きつつあるものが多いのだ。白ワインのシャープな味わい、ミネラル感は北海道の白ワインに近いものがあり、自然と親近感を覚えた。私はボルツァーノという街を訪問したのだが、この街のテルメーノ(ドイツ語でトラミン)という地域はゲヴュルツトラミネール発祥の地として知られている。世界的に広まっている品種の原産地に来られることは滅多にない。地域のワインを飲み比べ出来るショップでは、様々なワイナリーのトラミネールを試飲する機会にも恵まれ、とても貴重な経験となった。
 今回取り上げたいワイナリーはPojer e Sandri(ポイエル・エ・サンドリ)である。この地域の土着品種であるノジオラを使用したワインで有名で、彼らのワインは日本にも輸入されている。ドイツの大学との共同研究で復活させたソラリスという古代品種を使用したワインZERO INFINITO(ゼロ インフィニート)がとにかく個性的だった。栽培においては、農薬や銅だけでなくボルドー液さえ使用せず、醸造においても亜硫酸は添加しない、全てゼロ、ブドウのみのワイン。澱引きもしないため澱が残り、自然な微発泡性を持つ。野生酵母を使用したワインについての研究を行っているため、いわゆる自然派と呼ばれるワインは色々と経験してきたが、このワインはとても心地よい飲み口だった。全てを自然に頼るのではなく、余計なものを加えるのではなく、彼らの信念に基づいて栽培と醸造を行っている結果が表れているのかもしれないと感じた。他のワインの醸造においては、収穫したブドウを冷蔵庫内で一晩休ませ、少量のクエン酸を加えた水で洗浄する。こうすることで虫を追い出し、果皮の銅、硫黄や酵母以外の雑菌を洗い流すことが出来るという。自然派、ナチュールワインの色が強いながらも、大学と共同研究をしていたり、こういった工程を踏んでいたりと、科学的なことを否定せず、独自の視点で自然と科学の調和をとっているのだと私は感じた。
 私の研究テーマは野生酵母や自然発酵であるが、こういった手法を取り入れる生産者の中には、科学的な介入を好ましく思わない所も珍しくはない。生産者ごとに程度は違えど、自然と科学のバランスというものが存在しているのだと、この訪問で感じた。醸造の全てを自然のなすがままにするのか?という問いに、それが出来るだけのブドウの質に仕上げると回答する生産者もいれば、培養酵母を加えて発酵条件を整え、人がある程度介入することで一定の品質を保つ生産者もいる。そういった生産者の考えが表れたワインが、私はとにかく興味深いと思うのだった。

トレンティーノ・
アルトアディジェ州のワイナリー
Pojer e Sandri

Pojer e Sandriで試飲したワイン
”Zero Infinito”

フランチェスコ(写真左奥)と
お世話になった友人たち

酪農学園大学社会連携センター(2019.02.19)|お知らせ, 体験談, 全件, 国際交流, 大学HP更新用, 研修を終えて(留学)

このページのTOPへ戻る