酪農学園大学社会連携センター アーカイブサイト > 全件 > 国際交流 > 体験談 > 中間報告(青年海外協力隊) > 青年海外協力隊 現地レポート 千村友輝君/エルサルバドル・青少年活動

Topics

掲載日:2013.01.10

青年海外協力隊 現地レポート 千村友輝君/エルサルバドル・青少年活動

 

「ちょっと、ちょっと!これ忘れてるよ!」

細い木を組んでその上にビニールを被せただけの簡易的な造りの店が立ち並ぶ「メルカド」と呼ばれる市場から、おばちゃんが息を切らしながら追いかけてきた。

さっきその店で果物を買ったときにもらい忘れたおつりだった。金額は1ドルと50セント。日本円では130円くらいだろうか。エルサルバドルでもなんてことはない金額だ。

でも、それをわざわざ息をはずませながらもって来てくれたことが嬉しくて、

「おばちゃん、わざわざありがとー。じゃあ、これで買えるだけマンゴーちょうだいな。」そう言ってお礼の気持ちでマンゴーを買った。マンゴーの甘さが手伝ってかジワーっと心が温かくなっていくのを感じる。

エルサルバドルの人の、こんなちょっとした優しさや誠実さに触れ、とても豊かで幸せな気持ちで過ごすことができる。日常の中で出会う、そんなささやかな出来事や気遣いに気づけるようになっている。

 

☆ 旅が教えること ☆

そんな自分自身の変化の切掛けとなったのは8月。任国外旅行でドミニカ共和国へ行った時のことだった。

青年海外協力隊はその二年間の任期のなかで任国外旅行といって、任国の周辺国を旅する機会が与えられる。エルサルバドルは8月にカトリック教の行事で、アゴスティーナと呼ばれる祭があり、その期間はどこも一週間程の長期連休になるので、その休暇を利用しドミニカ共和国へ行ってきた。

clip_image002

ドミニカ共和国は、アメリカ合衆国マイアミの南西部、そしてキューバのお隣、カリブ海と大西洋に囲まれた島である。島の名前はイスパニョーラ島、2010年に大地震におそわれたハイチと島を二分している。エサルバドルの東部に位置し、カリブ海と大西洋に囲まれた小さな島国である。どこまでも青く透き通る海が有名で、あのパイレーツオブカリビアンの撮影ロケ地にもなったほどだ。首都のサントドミンゴはカリブ海でも有数の世界都市であり、町並みや建造物の歴史も古い。夜はレンガ造りの建物が黄色等の街頭に照らされ、大聖堂や要塞の周囲を歩いていると、何とも過去にタイムスリップしたかのような幻想的な気分になる。

ドミニカ共和国を歩いていて感じたことは、なんと言っても黒人が多いことだろうか。過去に黒人が大量に労働力としてアフリカから連れてこられた歴史があり、国民の11%がアフリカ系民族、また70%がムラートと呼ばれるヨーロッパ系と黒人との混血が占める。

少し余談になるが、エルサルバドル近隣国のホンジュラスやグアテマラなどにはアフリカ系の移民が多く住む。しかし、エルサルバドルでは黒人を見ることは殆どない。すぐ近くのなのに何故だろう?と思っていたが、その理由はエルサルバドルが山脈に隔てられていること、太平洋にしか面していないので大西洋側からの上陸ができなかったという地理的な背景や、また過去の政権で黒人の侵入を禁止したなどの歴史的な背景もあるらしい。

話を元に戻すが、人生初の美しいカリブ海を眺め、サントドミンゴのお洒落な町並みを散策し、美味しいご飯に舌鼓をうつ。観光資源が豊富で、食べ物も美味しいドミニカ共和国。「もうエルサルバドルには帰りたくない!」と、そう思ったかというと、実はそうではなかった。

不思議なもので旅行の記憶としてより強く心に残るのは、綺麗な自然や、美味しい料理より、その旅先で出会う人とのエピソードだ。

この旅を経て一番心に残ったことは意外にも、比べることで始めて気づいたエルサルバドル人の良さだった。

僕がドミニカ共和国にいたのはたったの4日間だけだったので、あくまでこれは僕個人の体験から感じた意見でしかないが、ドミニカ共和国では、会計をごまかさずに対応してくれる人にも、困った顔をしていると気を使って話しかけてくれる人にもなかなか出会うことが出来なかった。観光客慣れしたタクシーの運転手は、殆どの確率で高額な金額を吹っかけてきたし、親切にしてくれた人ですらその後にお金を求められた。振り返るとそんなエピソードが多かった気がする。

エルサルバドルはドミニカ共和国のように観光資源が豊かなわけではない。ラテンアメリカの中でもどちらかと言うと大人しく、そんなに派手さのある国民性ではない。しかし、長く住んでみて、近隣の国と比べて思うことは、エルサルバドルの人はほのぼのとした温かさや優しさがある。

何か困っていると必ず誰か現れて世話を焼いてくれるし、バスの中でもお年寄りや子連れに当たり前のようにみんな席を譲っている。エルサルバドルは中南米の日本と呼ばれているらしい。働き者で、親切で、誠実な、恥ずかしがりやが多い国民性。

まだまだ知らない面は山ほどあるのだろうけど、ちょっとずつエルサルバドルのいいところを見つけていけているように思う。

日差しの強いメルカドの昼下がり、焼けたアスファルトの中を物売りの声が飛び交う。わざわざおつりを渡すために走って追いかけてきたメルカドのおばちゃんの背中を見ながらそんなことをしみじみ感じていた。

 

☆ 旅の醍醐味 ☆

clip_image004

比べる対象が出来た時に、その元の物が持つ良さや不都合さに改めて気づくことが出来る。海外に旅をすることの一番の魅力はそこにあると思っている。

日本のこともエルサルバドルに来てから分かった事が沢山ある。日ごろ当たり前のことが海外では当たり前ではない。そんなときに初めて自分が当たり前だと感じていたものの観念が外れて、それらを比較でき、その魅力や本質に気づくことが出来る。比べることで視野を広げ、柔軟な価値観を手に入れることが出来ると思う。これが旅をする醍醐味だと感じる今日この頃。

今回も読んで頂きありがとうございました。

{写真}旅行中、お世話になったドミニカ共和国で活動する協力隊員のみなさん。それぞれ国で活躍する協力隊員に会えるのも、任国外旅行の楽しみにの一つ。

酪農学園大学社会連携センター(2013.01.10)|中間報告(青年海外協力隊), 体験談, 国際交流

このページのTOPへ戻る