
掲載日:2019.02.18
2018年度イタリア研修報告 トレンティーノ・アルトアディジェ編 その1
大学院 酪農学研究科 博士課程1年 髙橋 宗一郎
2018年の8月から9月にかけて、私は前年度のイタリア留学(トビタテ!留学JAPANプログラムを利用しての留学)のフォローアップとして再びイタリアで研修を行った。北イタリアのトレンティーノ・アルトアディジェ州、ピエモンテ州のワイナリーを巡り、留学を受け入れてくださっていたマルケ工科大学、マルケ州のワイナリーを訪問した。その研修の成果について、数回に分けて報告する。
この研修はミラノで友人のフランチェスコに会うことから始まった。彼は大学でブドウ栽培とワイン醸造を学び、現在はワインメイカーとして、Enology(=ワイン学)に関する情報発信を行う仕事をしている。幸運にも留学中にワインのイベントで知り合い、すっかり意気投合し、今回の再訪問を歓迎してくれた。話すスピードが速く、聞きなれない言い回しも多かったため聞き取ることが大変だったが、ワインに関する専門知識も豊富で、とても頼りになる存在だった。
本当にたくさんのワイナリーに連れて行ってもらったため、その全てを紹介出来ないのは残念だが、特に印象に残った2か所について報告したいと思う。
1か所は、北イタリアで最も有名なスパークリングワインを生産していると言っても良いFerrari(フェッラーリ)である。日本にもかなりの数のワインが入っており、スーパーで見かけたことがある人もいるはずだ。ちなみに、車のフェッラーリとは全く関係はない。Ferrariはシャンパンと同じく瓶内二次発酵を行い、発泡性ワインを製造している。イタリアでは近年こうしたmetodo classico(メトド クラシコ)製法でスパークリングワインをつくることが1つのブームになっているようだが、Ferrariでは100年以上前からこの製法でワインがつくられている。小さな博物館のように展示されている古い器具やセラー、醸造設備を一通り見学した後、4種類のワインを試飲した。日本人にとってスパークリングワインは、甘いもの、果実味が豊かでフレッシュなものという印象が強いかもしれない。しかし、私が飲んだ4種類は、シュールリー(ワインに複雑さやうま味を与えるため、酵母の菌体が主成分の澱(オリ)を取り除かず、ワイン液と接触させ続ける手法)が長期間行われており、とてもドライで泡の持続性が良いものばかりだった。最低6年から10年のシュールリーを行ったものまで、なかなか出来ない飲み比べをさせてもらった貴重な体験だった。Ferrariのワインは白ブドウであるシャルドネを使用したものがほとんどだが、黒ブドウであるピノ・ネロ(ピノ・ノワール)を使用したワインも醸造している。これは、黒ブドウからつくられたシャンパンを指すBlanc de Noirs(ブラン・ド・ノワール)への挑戦だという。黒ブドウを使用していても、果皮は取り除いて醸造するので色は黄色で、他のワインよりも金色に近い明るい色合いが特徴的だった。全体を通して、やはり熟成期間が長いほど味わいが深くなり、10年のシュールリーを行ったワインはハチミツやチョコレートのような香りがあり、とてもエレガントだった。軽いものから順に試飲していったが、個人的には2番目に飲んだピノ・ネロのものが好みだった。
Ferrariはそれまで訪問してきたワイナリーの中でもトップクラスに大きなワイナリーだった。これまでは、比較的小規模なワイナリーを訪問することが多かった分、ここでの学びは大きかった。今後も規模や地域、製造方法の異なる様々なワイナリーを知り、自分の中での比較対象を増やしていきたい。
*Ferrariにて試飲したワインは以下の通りである。
FERRARI PERLÉ ZERO CUVÉE ZERO11, FERRARI PERLÉ NERO RISERVA 2009, FERRARI RISERVA LUNELLI 2009, GIULIO FERRARI RISERVA DEL FONDATORE 2007.
トレンティーノ・
アルトアディジェ州の
ワイナリーCantine Ferrari
Cantine Ferrariの醸造設備
Cantine Ferrariにて試飲した
ワイン4種