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掲載日:2018.01.10

トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム~地域人材コース(イタリア)活動報告書(12月)

酪農学園大学大学院 修士2年 髙橋 宗一郎

  12月は私の留学の総まとめの月でした。大学での研究留学を終えサルデーニャ州に移り、6件のワイナリー訪問を行い、1件のブドウ栽培農家を訪れました。短い滞在期間でしたが、受け入れ機関の方との事前の打ち合わせがあったことと、現地で多くの方が協力してくださったことで、多くのワイナリーでお話を伺うことが出来ました。

 初めはAzienda agricola FABIANO NIEDDU(ファビアーノ・ニエッドゥ)という農場への訪問でした。ここでは主に養蜂がメインに行われており、ハチミツやプロポリスなどが通年販売されているのですが、同時に少量ながらオレンジを使用したワインも生産されています。地元のオレンジを使用したワインはサルデーニャ島の特産品として有名です。同じく柑橘系のレモンを使ったお酒としてシチリア島のリモンチェッロが有名ですが、アルコール度数30度程度のリモンチェッロに比べ、オレンジワインは16%ほどです。というのも、リモンチェッロは蒸留酒にレモンを漬けて作られるリキュールですが、オレンジワインはオレンジ果汁を発酵させて作る正真正銘のワインなのです。ここでは自前のオレンジに砂糖や酵母を一切加えずに発酵させてワインを作っていました。私が見学した時はまだ泡が立っており発酵中でした。アルコール度数16%ですがかなりの残糖があり、元々のオレンジの糖度が高かったことが分かりました。島の特産品ではありますが、サルデーニャの人々の食事の席に出てくる機会は少なく、ミルトという渋いブルーベリーのような実をリキュールに漬け込んだお酒が食後によく飲まれていました。このミルトも同じくサルデーニャの特産品です。

 続いて訪問したのはCantina Dolianova(ドリアノーヴァ)とCantina Argiolas(アルジョラス)という2つの大きなワイナリーでした。Dolianovaは1200haのブドウ畑を所有し、年間400万本を生産する大きなワイナリーで、店内にはガソリンスタンドにある給油の装置とまったく同じものが、ワインの量り売りのために置かれていました。イタリアに来て初めて見ましたが、サルデーニャに限ったものではないようです。私が担当の方に話を聞いている間にも、多くの地元の方が自前の容器を持ってワインを買いに来ていました。Argiolasもこれに近い規模でしたが、Dolianovaよりも価格設定が若干高く、かなりの本数を海外へ輸出しているとのことでした。東京にも支部があり、日本にもワインを輸出しているため、とても歓迎してくださいました。どちらのワイナリーでも、主力の赤ワインは「カンノナウ」というブドウ品種を使用したもので、「赤ワインといえばカンノナウ」というくらいに、サルデーニャではカンノナウが好まれています。

 Collina dell Vento(コッリーナ・デル・ベント)は風の丘という意味のワイナリーでした。海にほど近い所にブドウ畑を持ち、有機栽培を行っている小さいワイナリーです。ここでも栽培やワイン醸造について話を伺いましたが、特に印象的だったのは「なぜ有機栽培でブドウを作るのか(なぜビオワインを作るのか)」という質問への回答でした。「ワイン造りはビジネスの面と哲学の面がある。よりたくさんのワインを造って売ることを考えるか、哲学的に捉えて理想のワインを造るか、生産者は皆そのバランスを自分なりに取っているのだと思う。ビオ製法はある意味で私の哲学なんだ」。この話を聞き、私はこれまでのワイナリー訪問のことをやっとまとめることが出来るようになりました。ワイン造りは一言で「ワイン産業」とは言えない世界なのです。企業として安定した品質のワインを安定した価格で作るワイナリーもあれば、栽培から醸造まで一貫して哲学を持って取り組む小さいワイナリーもあります。それらはどちらが良いとか、やがて全て片方に統一されるというものではないのだと知りました。
サルデーニャはローマ史以前の歴史があり、イタリア本土と比べても異色な文化が息づく地域でした。そのためブドウ栽培の歴史も長く、4000年以上前からワイン用のブドウが作られてきました。しかし「ワイン生産」「ワイン産業」という意味では歴史が浅いという一面も持ち合わせています。あくまで私の主観ですが、大きなワイナリーが多くあり、非常に小さな規模のワイナリーもあるがあまり知られていないという現状は、北海道によく似ていると感じました。ブドウ栽培に適した土地であれば人々はワインを作る。それは、雪が降る北海道でも、地中海に浮かぶサルデーニャ島でも同じであるということを強く感じました。


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